豊後大野には、「原尻の滝」のほかにもうひとつ、「沈堕の滝」という滝があります。大野川本流にある「雄滝」と、大野川の支流である平井川にある「雌滝」によって構成されています。
室町時代の有名な水墨画家「雪舟」により、「鎮田瀑図」として描かれていますが、大分県民にすらあまり知られていない、隠れた名瀑です。
「原尻の滝」同様、こちらも9万年前の阿蘇山大噴火の時の火砕流によりできたそうで、「雄滝」は幅97m、高さ17m、「雌滝」は幅4m、高さ18mあります。
県道から滝の標識の方向に入って行くと、狭い道を森の中へ進んでいくのですが、道が細くなるばかりで、それらしきものが見当たりません。
そこで引き返すと、視界の開けた畑の間に、車1台やっと通れる位の狭くて、かなり急な下り坂があり、そこを下って行くと「ちんだの滝ふれあい公園」がありました。
公園といっても、さほど広くない未舗装の駐車場と、トイレと、崖に張り出す形に、丸太で組まれた休憩所があるだけです。早速車を降りて、休憩所に上がってみました。
すると、何と、、遠く正面に、横幅いっぱいに豊富な水流が、怒涛のように流れ落ちる滝が見えるではありませんか!はじめてこの光景を見た時には、まさに感動ものでした。
沈堕発電所跡の遺構越しに、川の流れと並行して滝の手前まで続く遊歩道を望む景観は、何とも言えぬ素晴らしい光景です。
階段をおりて遊歩道を滝に向かって進むと、左に船着き場跡へ下りる階段があるので、そこを下ってみました。
少し行くと、そこには旧発電所の石造りの壁だけが残されていて、辺り一面雑草が生え放題。廃墟のようなこの場所で、昔発電所が稼働していたなんて、全く想像がつきません。
明治時代には、ここで作られた電力が、大分-別府間の路面電車に送られるなど、日本の近代化に寄与したそうです。
この河原からは、低い位置から滝を眺めることができます。また下流には、川に架かった青い橋を見ることができます。
来た道を戻って、遊歩道をさらに滝の近くまで歩いて行くと、小高くなった展望台があります。ここからは滝を斜め上から、間近に見ることができます。
間近に見る滝は、さらに迫力満点。流れの中に、吸い込まれそうです。この激しい水流により、滝が崩落するのを防ぐため、長い間落水を停止していましたが、再びこの勇壮な姿が見れるよう、大掛かりな修景工事を行い、平成8年に復活したそうです。
「原尻の滝」は、優雅で流麗な美しい姿、「沈堕の滝」は、荒々しく勇壮な姿が特長的です。
また「原尻の滝」は観光地化されているのに対して、「沈堕の滝」は道もわかりにくい、周辺に何もない、といった感じで、全く観光地化されていないのも、ある意味魅力かも知れません。
場所もわりと近いので、両方訪れて、見比べてみるのもいいと思います。